取捨選択
2018年03月18日
取捨選択を常に迫られている
迫られているというより強制されている
と言った方が的を得ている

堅物そうな爺さんの顔が
地面からボコボコと湧いて出てきて
まだかまだかと急かし詰め寄る

要るものと要らないもの
この二択の間に他の選択肢は存在しない
さし迫る分別に急かされて
本当に必要なものが何なのか判らなくなる

熱を失った太陽が頭の裏でキリキリ痛む
目を閉じることばかり考えてしまう
耳を塞ぐことばかり考えてしまう

香り、味わい、色艶、原料、荷造、梱包
全てにおいて一級品の年代物ワインも
拙速な審議に左右されてしまえば
それは時に価値のない廃棄物へと成り下がる

もう嫌になる 逃げ出したい
果てしなく地面から顔がボコボコ湧き出てきて
まだかまだかと何度も何度も唸り散らす

この先に一体何があるというのか
きれいな便所ときたない便所のふたつがあって
どちらかひとつを選べと申されたところで
狂った取捨選択がきたない便所を選び出す

きたない便所なんか好きでもないのに
きたない便所しか愛せなくなる
自分の運命に対する呪詛が噴き上がり
それこそ自分の運命を取捨選択したくなっても

思いのほか運命は廃棄するには忍びない
棺桶の蓋はぴったり閉まっているのだから

繰り返すこの取捨選択
終わりなきこの取捨選択
爺さんが唱える念仏のような声がまた
頭の中で賛美歌のように響き渡る
断絶
2018年03月10日
hikoutou.jpg

入場口で立ち尽くす
ぽっかり抜け落ちたこころの隙間から
都合のいい理由だけをじっと見つめて
さびれ果てた遊園地に想いを馳せる

ちんまりとした静寂
誰もがゆとりある日々を求めていた
この落ちぶれた国家の片隅で
愛だとか夢だとか語らいながら
誰もが自由で大げさな何かを求めていた

美しいもの
素晴らしいもの
価値あるもの
なんかいい感じのもの

そんな金太郎飴のような理想を振り返り
そよ風にゆられて回転している
乗客のいない飛行塔のゴンドラを眺め
断絶された景色をただ嘆くだけの愚かさよ

耳をすませは聴こえてくる
バグって誤再生するスピーカーの
音声の割れた迷子のお知らせ

誰もいない遊園地
はしゃぎまわる迷子の影は
忘れ去られた日々の面影なのかそれとも
その辺に住んでるただの浮浪者なのか

我々の世代はきっと
こころの底からかなしいと
思うことは出来ないのかもしれない

あの飛行塔のてっぺんで
パープーな頭にテキーラ注いで騒ぎまくり
パンツ一丁で上空を回転していたあの頃
あの頃は本当になにもかもが楽しくて
なにもかもが嬉しくて
そしてなにもかもが間違っていた
修理済み
2018年01月03日
robo.jpg

壊れたままのふたりでいたかったのに
きみは知らぬ間に修理にだされて
新品同様の出で立ちで戻ってきた

きみはわたしにささやいた
音声ガイダンスにしたがって
パスワードを入力してください

わたしは秘密の呪文をとなえた
ラ・ヨダソウ・スティアーナ
そして背中のボタンをポチッと押した

するときみはがたがたふるえて
頭がはずれてロケットのように
ごおごおと火をふいてとんでいった

頭はまだ壊れたままみたいだ
きみは根本的には前のままみたいだ
ホッとわたしはこころをなでおろした

けれどそのとき気づいてしまった

あの日
わたしが殴って傷つけてしまった
きみの豆電球の目玉が
LEDに替えられていたことに

ふたり もしかしたら
なにも変わらないままでいるなんて
できないのかもしれない

わたしはただ立ち尽くしていた
空たかく消えていく
きみのぴかぴかの頭を見つめながら
いんそむにあ
2017年12月30日
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ゆりかごのなかで見た
ゆりの花に裏切られる夢は
あなたのうちにひそむ
ないものねだり

ゆりの花は純白だなんて
あなたの勝手な思い込み
この世で本当に純白なのは
あなたの白髪とミルクだけ

あなたのすぐとなりで
ずっと踊り狂っている
ボンクラたちの言葉に
少しは耳をかたむけてみるのです

ゆりの花束を今すぐ手放しなさい
ゆりの花束を今すぐ手放しなさい

あなたの脳みそのなかにある
カビ臭い部屋の花瓶に放置された
そのひからびた花はまぎれもなく
あなたの理想のなれのはて