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排気口から声
2016年12月07日
haikikou.jpg

エレベーターに乗り込んで
「閉」のボタンを押そうとした時だった

天井の排気口から声がした
「未来と過去、行きたい方のボタンを押しなさい」

正面のボタンに目をやると
「開」のボタンが「未来」に
「閉」のボタンが「過去」に変化していた

「過去」が元々「閉」だったことを考えると
こちらを押すのは本能的に望ましくないと感じ
すかさず「未来」のボタンを押す

「過去があるから今のお前がいるんじゃないのか馬鹿野郎」
排気口に怒鳴られた

どうやら「過去」の方を押して欲しかったようだ
しかし何故怒鳴られなければならないのか
まるで「過去」を押すのが当然というような口ぶりだ

ならば最初から選択肢など与えなければよいのだ
苛立ちを覚え「未来」のボタンを連打する

「ちょっと待て!落ち着け!」
「駄目!そんなに押したら過去がしわくちゃになる!」

排気口が悲鳴をあげている
構うものか
怒りにまかせて連打し続ける

プツンッという切断音が響き
同時にエレベーターが動き始めた

どうやらエレベーターは
「未来」に向かって発進したようだ

排気口は普段の排気口に戻り
ごおごおと空気を入れ替える音だけ立てている

...この選択は果たして正解だったのだろうか

とっさに「未来」を押したけれど
そもそもエレベーターに乗り込んだ時は
「閉」を押そうとしていたのであって
つまり本来は「過去」を押すべきだったのではないだろうか

期待と不安が半分ずつ
心の中でコトコト混ざりあう

しかし想像を煮詰めたところで仕方がない
すでにエレベーターは発進している

この先を考えると途方もないが
引き返すには遅すぎる
立ち止まることはできない

「過去」が「未来」をつくり
「未来」が「過去」をつくる

結論を天秤にかけるのは無益に等しい

チンッという音がなり
エレベーターがとまった

いま扉が開かれる

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