17インチナショナルカラーテレビ
2016年02月11日
nationaltv.jpg

太陽が大爆発した。
何の前触れもなく突如大爆発した。
僕の頭の中ではゴミ収集車の音楽が鳴り響き、
郷愁とは言い難いやるせない気持ちで満たされていた。

燃え盛る破片が隕石となって地球に降り注いで、
人々の阿鼻叫喚が温泉のように街中で溢れ返っていた。
僕は騒ぐわけでもなく喚くわけでもなく、
脳内のゴミ収集車のほろ苦いメロディーを賞味しながら、
ただひとりぼうっと物想いに更けていた。

昔僕がふざけて壊してしまった、
高級カラーテレビを引き取ったゴミ収集車の想い出を、
家族全員で号泣しながら見送ったゴミ収集車の想い出を、
じんわりと想い出していた。

あの日母はハンカチーフを噛み締めて絶叫していたし、
父は口を全開にして地蔵のように動かなくなっていた。
17インチの最新カラーテレビだった。
ナショナル製の高級カラーテレビだった。
家族自慢のカラーテレビだった。
僕が壊してしまった。
ゴミ収集車に持っていかれてしまったのだ。

苦しくて苦しくて、心も身体も焼け爛れてしまいそうだった。

アスファルトが粉々に割れて、轟音が過去も未来も掻き消していく。
大事なものもそうでないものも、なにもかもが灰燼に帰していく。
けれど相変わらず僕の頭の中ではゴミ収集車の音楽が鳴り響いていた。
あの音の割れたモノラルの音楽がいつまでも鳴り響いていた。
この世の平和を、地球を、僕の身体を、僕の想い出を、全て引き取るかのように。

鳴り響いていたのだ。