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つぶれた理髪店
2016年02月20日
syoutengai.jpg

通っていた理髪店が今月店を畳んだ。
予告もない突然の閉店だった。
聞いた話によると、店主は夜逃げしたらしい。

この店の店主はちょっと変わったオッサンだった。
とにかく来た客全員丸坊主にするオッサンだった。
ハサミ使わない主義だとかよくわからないオッサンの理念のもと、
バリカン一本でされるがままの店だった。
客の希望の髪型なんておかまいなしの店だった。

僕の隣の席ではいつも無理矢理頭を丸刈りにされたガキンチョが
涙をたくさん溜めた目で、目の前の鏡を見つめていた。
当然僕も丸刈りにされていた。
僕は髪型に拘りはないので、頭がスッキリすれば別に丸刈りでも構わなかった。
ただ僕の心の片隅では、通うべき理髪店を間違えているのではないかという
得体の知れぬ不安が常に渦巻いていた。

店内では何故か大事MANブラザーズバンドの唄がエンドレスで流れていて、
壊れかけの換気扇のガーガーする音と混ざり合っていた。
丸刈りにされた頭の仕上がりを鏡で確かめていると、
そこはかとなくつらい気持ちが引っ切り無しにあふれてきて、
気付いたら僕も涙をたくさん溜めた目で鏡を見つめていた。

もう次からは別の店にしようかなんてことを思っていると、
目の前にはピカピカに磨かれた年季入りのバリカンがギラギラ輝いて、
店主のオッサンの顔を映していた。
「よく似合ってるゼ」
そう呟くオッサンの顔には自信が満ち溢れていて、
その瞬間、ああこの店に通っていて良かったのかもしれない、
なんて思ったりもした。それが先月のことだった。

店の前ではボロボロのサインポールが回ったままで放置されていた。
もう店主はいないはずなのに、まるで何事もなかったかのように回っていた。
赤青白のストライプがねじれながら、
どこまでもどこまでも、
ゆっくりだが果てしなく、上昇していた。

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