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シャッター街
2016年02月25日
nakatsu.jpg

商店街を歩いている
シャッターに囲まれながら
ペンキの剥がれた道を歩いている

見つからない駄菓子屋を探して
全体的に茶褐色な気分で歩いている

切れかけの水銀燈がチカチカ光って
辺りをぼんやり照らしている
油で真っ黒に汚れたホーローから
ほこりまみれの光が放たれている

誰がいつ貼ったのか見当もつかない
漢方屋のポスターが変色している
どこからともなく隙間風が吹いて
反り返ってバタバタ揺れている

行けども行けども
駄菓子屋は見つからず
行けども行けども
シャッターばかり

つぶれた本屋の跡地で
売れないバンドが演奏している
そのくたびれた唄だけが
シャッターの街を騒がせている

足をとめる通行人はいない
というよりそもそも
商店街を歩いている人がいない

バンドマンの彼女と思われる
寒そうな服着てる女の子だけが
そばで演奏を聴いている
寒そうな両脚を棒のようにして
まじまじと演奏を見つめている

あらゆる行く末を
見守っているかのように
まじまじと
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つぶれた理髪店
2016年02月20日
syoutengai.jpg

通っていた理髪店が今月店を畳んだ。
予告もない突然の閉店だった。
聞いた話によると、店主は夜逃げしたらしい。

この店の店主はちょっと変わったオッサンだった。
とにかく来た客全員丸坊主にするオッサンだった。
ハサミ使わない主義だとかよくわからないオッサンの理念のもと、
バリカン一本でされるがままの店だった。
客の希望の髪型なんておかまいなしの店だった。

僕の隣の席ではいつも無理矢理頭を丸刈りにされたガキンチョが
涙をたくさん溜めた目で、目の前の鏡を見つめていた。
当然僕も丸刈りにされていた。
僕は髪型に拘りはないので、頭がスッキリすれば別に丸刈りでも構わなかった。
ただ僕の心の片隅では、通うべき理髪店を間違えているのではないかという
得体の知れぬ不安が常に渦巻いていた。

店内では何故か大事MANブラザーズバンドの唄がエンドレスで流れていて、
壊れかけの換気扇のガーガーする音と混ざり合っていた。
丸刈りにされた頭の仕上がりを鏡で確かめていると、
そこはかとなくつらい気持ちが引っ切り無しにあふれてきて、
気付いたら僕も涙をたくさん溜めた目で鏡を見つめていた。

もう次からは別の店にしようかなんてことを思っていると、
目の前にはピカピカに磨かれた年季入りのバリカンがギラギラ輝いて、
店主のオッサンの顔を映していた。
「よく似合ってるゼ」
そう呟くオッサンの顔には自信が満ち溢れていて、
その瞬間、ああこの店に通っていて良かったのかもしれない、
なんて思ったりもした。それが先月のことだった。

店の前ではボロボロのサインポールが回ったままで放置されていた。
もう店主はいないはずなのに、まるで何事もなかったかのように回っていた。
赤青白のストライプがねじれながら、
どこまでもどこまでも、
ゆっくりだが果てしなく、上昇していた。
ゴミ袋と手首
2016年02月16日
寒い朝、可燃ゴミの日だったので、袋をまとめてゴミ出しに行った。

ゴミ置き場にはたくさんのゴミ袋が山のように積み上がっていて、
そばではカラスが一匹、首を傾げながら袋の中身をじっと見つめていた。

僕は持っていたゴミ袋を、ゴミの山のてっぺんに向かって放り投げた。
くしゃん と音を立てて、転がり落ちる僕のゴミ袋。

その瞬間、テレッテレーという効果音がどこからともなく鳴り響き、
ゴミ袋の山の隙間から白い手首がニュッと出てきた。

青白い手首だった。
ためらい傷の跡が無数についている手首だった。
手首はクルッと回転して手のひらをこちらへ向けた。

「ここで問題です。女の人が手首に傷をつける仮説的理由を、現代社会が抱える問題点を主軸とした150字以内の簡潔な回答で述べなさい。」
手首が喋った。

あっけにとられていると、後ろを通り掛かった老人が、
「自分だけ心に傷を持って生きてると思ってたらあんな風になる」
と僕に囁いた。

するとブッブーという効果音が大音量で鳴り響き、手首が大爆発した。
周りのゴミ袋もいっぺんに弾け飛んで大爆発した。
いろんな汚物が辺りに飛び散らかった。

僕は全身汚物まみれになった。
僕はことの理解が全くもって追いつかなかったので、
とりあえず「えっ」と言うことしかできなかった。

老人も汚物まみれになっていたが、
少しの沈黙の後、「最近の若い奴は...」
と何故か僕に少し説教をしてから、逃げるようにその場を立ち去った。

そばにいたカラスは僕らを少し見つめた後、
ケラケラ笑って何処かへ飛んで行ってしまった。

そんな寒い朝、可燃ゴミの日。

為す術なく立ち尽くす僕。
目の前にはどうしようもない、もう誰も片付けないであろう汚物の海が、
辺り一面へばりつくように広がっていた。
17インチナショナルカラーテレビ
2016年02月11日
nationaltv.jpg

太陽が大爆発した。
何の前触れもなく突如大爆発した。
僕の頭の中ではゴミ収集車の音楽が鳴り響き、
郷愁とは言い難いやるせない気持ちで満たされていた。

燃え盛る破片が隕石となって地球に降り注いで、
人々の阿鼻叫喚が温泉のように街中で溢れ返っていた。
僕は騒ぐわけでもなく喚くわけでもなく、
脳内のゴミ収集車のほろ苦いメロディーを賞味しながら、
ただひとりぼうっと物想いに更けていた。

昔僕がふざけて壊してしまった、
高級カラーテレビを引き取ったゴミ収集車の想い出を、
家族全員で号泣しながら見送ったゴミ収集車の想い出を、
じんわりと想い出していた。

あの日母はハンカチーフを噛み締めて絶叫していたし、
父は口を全開にして地蔵のように動かなくなっていた。
17インチの最新カラーテレビだった。
ナショナル製の高級カラーテレビだった。
家族自慢のカラーテレビだった。
僕が壊してしまった。
ゴミ収集車に持っていかれてしまったのだ。

苦しくて苦しくて、心も身体も焼け爛れてしまいそうだった。

アスファルトが粉々に割れて、轟音が過去も未来も掻き消していく。
大事なものもそうでないものも、なにもかもが灰燼に帰していく。
けれど相変わらず僕の頭の中ではゴミ収集車の音楽が鳴り響いていた。
あの音の割れたモノラルの音楽がいつまでも鳴り響いていた。
この世の平和を、地球を、僕の身体を、僕の想い出を、全て引き取るかのように。

鳴り響いていたのだ。
ルービックキューブ
2016年02月06日
cube.jpg

僕たちの仕事、
それはぐちゃぐちゃになったルービックキューブを、元の形に戻す仕事。

僕とひろみちゃんとたかしくんは、
一切の外気が遮断された部屋で、
ベルトコンベヤーから運ばれてくる大小様々なルービックキューブを、
ひとつひとつ元に戻していく。

次から次へと運ばれてくるルービックキューブ。
日に日に山積みになっていくルービックキューブ。

完成の目処が立たない手元のルービックキューブに頭を抱えて過ごす日々。
ルービックキューブだらけで頭がルービックキューブになってしまいそうな嫌な日々。

僕は溢れそうになる涙をこらえながら、
ぐちゃぐちゃのルービックキューブをしぶしぶ手に取り、
今日もまた黙々と、カチカチ作業に取り掛かる。

ひろみちゃんは無表情でルービックキューブとにらめっこしている。
黒豆のようにつやつや光る目玉をひん剥いている。
時折「あの時契約して魔法少女になっていれば…」と
意味のわからない独り言をぶつぶつ呟いている。

たかしくんはなぜかいつも笑っている。
笑いながらルービックキューブを手に取り、
ものすごい握力で粉々にする。
そして無理矢理元の形に組み直して爆笑している。

僕はこのふたりと幼馴染なんだけど、このふたりが昔から苦手だ。
ひろみちゃんは何を考えてるのかがわからないし、
たかしくんはなんでも握力で解決しようとする。

この密閉された空間で、このふたりと長時間ルービックキューブをいじっている。
そんな毎日に僕は気が狂いそうになる。

夕方になるとピンポンパンポンとチャイムが鳴り、今日の仕事が終わる。

部屋から解放されて、
ひろみちゃんとたかしくんは目にも止まらぬ驚異的な速度で走って家に帰る。
僕はふたりの残像を見送って、ひとりとぼとぼ歩いて家に帰る。
そして夕陽を眺めながら僕は考える。

この世界がルービックキューブだったらいいのに。
嫌なことは全部回転させて、
あっちこっち入れ替えできればいいのに。
そして全部ぐちゃぐちゃにしてしまえばいいのに。

でも。

ぐちゃぐちゃにして八方塞がりな状態にしてもきっと、
それでも組み直そうとする知らない誰かがやってきて、
また元の統一された形状に少しずつ戻していくんだろうな。

僕やひろみちゃんやたかしくんが毎日そうするように。
苦悩しながらカチカチと。
無表情でカチカチと。
笑いながらカチカチと。
カチカチカチカチカチカチと。



VIPでテキストサイト企画、バトンリレー
オナ禁始めました。さんから「ルービックキューブ」というお題で回ってきたので書かせていただきました。
次のお題は「ボンド」でねじまき鳥よ、おれの幸運を願えさんに回してみようと思います。

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