フールなエイプリル
2018年04月01日
嘘にまみれたこの日常
嘘が舞い散る街のなか
僕も私もみんな嘘つき
嘘に喜び嘘に泣き
気づけば嘘に生かされている

嘘が転がる時代の片隅で
嘘を買い漁り嘘を着飾り
ありふれた嘘を求め安堵する若者たち
嘘が無ければ満たされない
ありふれた嘘という嘘

最近の若いやつは嘘まみれとのたまう
じいさんばあさんももれなく嘘まみれ
嘘を食い荒らし嘘を飲み尽くし
湯水の如く嘘を消費し続ける毎日
振り返れば嘘 前を向いても嘘
だって仕方ない嘘なんだもの

コンビニは嘘しか売ってないし
テレビは嘘しか映していない
嘘の列車に乗って嘘の景色を眺めれば
山々は嘘が咲き乱れ
空は嘘が群れを成して羽ばたき
河川は嘘が優雅に泳いでいる

嘘という名の僥倖
嘘は優しさという虚栄
嘘まみれの君がつぶやいた
ぜんぶ嘘だったらいいのに
私にとって都合の悪い嘘だけが
ぜんぶ嘘だったらいいのに

嘘に惑わされ嘘に傷ついた
嘘つきな君に嘘をたったひとつだけ
笑ってください嘘でもいい
一分一秒でも長く嘘に笑っていてください
嘘のなかに垣間見える僅かな愛を
胸に抱いて嘘を見つめていてください

俺の言葉はぜんぶ嘘です
そんな俺の嘘を指さし笑ってください
たとえこの身が嘘で朽ち果てたとしても
嘘の墓場から蘇って君に会いに行きます
きっと君のために嘘を言いに行きます

嘘の総合デパートメントストアで
真っ赤な嘘の花束を買っていくから
嘘くさい口笛吹いて笑っていてください
嘘っぱちの現実に負けない
自分に正直な嘘を吐いていてください

きっとそれは素敵な嘘に違いないから
小さく頷ける清純な嘘に違いないから
取捨選択
2018年03月18日
取捨選択を常に迫られている
迫られているというより強制されている
と言った方が的を得ている

堅物そうな爺さんの顔が
地面からボコボコと湧いて出てきて
まだかまだかと急かし詰め寄る

要るものと要らないもの
この二択の間に他の選択肢は存在しない
さし迫る分別に急かされて
本当に必要なものが何なのか判らなくなる

熱を失った太陽が頭の裏でキリキリ痛む
目を閉じることばかり考えてしまう
耳を塞ぐことばかり考えてしまう

香り、味わい、色艶、原料、荷造、梱包
全てにおいて一級品の年代物ワインも
拙速な審議に左右されてしまえば
それは時に価値のない廃棄物へと成り下がる

もう嫌になる 逃げ出したい
果てしなく地面から顔がボコボコ湧き出てきて
まだかまだかと何度も何度も唸り散らす

この先に一体何があるというのか
きれいな便所ときたない便所のふたつがあって
どちらかひとつを選べと申されたところで
狂った取捨選択がきたない便所を選び出す

きたない便所なんか好きでもないのに
きたない便所しか愛せなくなる
自分の運命に対する呪詛が噴き上がり
それこそ自分の運命を取捨選択したくなっても

思いのほか運命は廃棄するには忍びない
棺桶の蓋はぴったり閉まっているのだから

繰り返すこの取捨選択
終わりなきこの取捨選択
爺さんが唱える念仏のような声がまた
頭の中で賛美歌のように響き渡る
汚いサンタクロース
2017年12月25日
汚いサンタクロースが
きみの帰り道にあらわれるなら
きっとポケットティッシュを
プレゼントしてくれるだろう

そのポケットティッシュの
電話番号にかけてみるなら
アッと驚くタメゴロー
つぎの朝きみの脳みそは
食いもののことで溢れかえっている

汚いサンタクロースは
なぜ汚い格好をしているのか
クリスマスプレゼントは
なぜポケットティッシュなのか

色づけられた街のなか
枯れ木にまきつく豆電球たちが
街中で点滅するカラフルなそれらが
いっせいに光を失うとき

きみはただのトナカイになって
ふくれた残飯さえも食いあさる
カプセルシューター
2017年12月17日
麻酔がまかれた夜の空
星たちは眠りについたまま
ふたりの部屋はセミロング
ときめくふたりのセミロング

シャレた黄緑の冷蔵庫
開ければひんやりさわやかだけど
缶かんはぜんぶプルトップ式で
期限はマジックで消されてる

カプセルシューター会計機
部屋の隅でたたずんでいるけど
ちゃんと動くのか不明な感じで
黄ばんだボタンがさみしそう

どうせふたりはお金を払わないから
できそこないの夜だって楽しめる

缶かんふたつ開封して
わけのわからない色した液体
しらけたガラスコップにそそぐと
ほらなんだかステキな気分

セミロングな夜によこたわる
ふたりの気持ちはカプセルシューター

カプセルシューター壊れてる
この部屋ならいつだってセミロング
のっぺらぼう
2017年12月13日
のっぺらぼうだったのさ
気づいたときにはもう
顔がきえてしまったのさ

とつぜんお腹がいたくなって
トイレをもとめて悶えるけれど
それをさがす目玉がないんだよ

とつぜん悪い人にからまれて
ぼこぼこにされたりするけれど
痛いと叫ぶ口がないんだよ

表情というものがない世界では
だれもかれもが顔を隠して
知らぬ存ぜぬの一点張り

ただ白いだけでなにもない頭には
むかしきいたおとぎ話だけが残されて
内部でひとしれず循環している

あさはかな言葉が不意に生成されて
でも吐き出すことができない毎日

すてきな音楽で気をまぎらわそう
でも聴く耳はどこにもなくて
じゃあ深呼吸して落ち着かせよう
でも空気を吸い込む鼻もなくて

かつて目玉があった場所を手で覆って
ながれ落ちない涙をながしています